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7-1.建設業の労働賃金問題

建設業の抱える最も大きな問題は建設業従事者の激減です。

労働人口が減る理由

建設業は毎年のように従事者の数が減っています。その理由は

・労働賃金が安い(コンビニバイトより安い場合も…)

・作業環境が過酷(身体が資本なので大変)

・労働時間が長い(一般的には週休2日・建設業は週休1日)

  などが挙げられています。

つまりこれらの課題を解決しなければ従事者の回復は見込めないのです。

そういうことから建設業ではこれらの課題を解決しようとしています。

建設業の労働賃金

建設業の労働賃金が安いことは比較的有名だと思います。

東洋経済ONLINE様の 『40歳平均年収「63業界ランキング」』によりますと,
建設業は17位となっています。17/63とすれば上位にいるようで非常に良く見えますが・・・

東洋経済ONLINE様より引用 https://toyokeizai.net/articles/-/187622?page=3

厚生労働省が2022年12月に公表した就労統計調査によりますと
建設業は1か月あたり167.1時間で,
全産業の平均137.3時間に比べて30時間程度多くなっていたようです。

建設業といっても事務など現場作業以外の方も入っていますから実際はもっと多いかもしれません。

労働時間については次の章で書きますので詳しくは書きませんが,これらを踏まえて考えていきます。

建設業労働賃金のリアル

先述した通り

・建設業の労働賃金は業界別で17/63位

・終業時間は平均比で30時間/月多い

 さらに一つ加えますと

・建設業の平均年齢は45.2歳(全産業では43.2歳)

ということで,賃金は17位と上位に見えても,その分働いていること,
また比較的高齢化しており,年齢により手取りが増えている場合には
他産業に比べて比較的多く見える。
という特徴があり,結果として時給換算すると決して多くはないと言えます。

建設業…コンビニより大変問題

建設業はよく3Kと言われ,キツイ・クサイ・キタナイ等と言われます。
他産業に比べると体を使っての『作業』になるためしんどい思いをすることになります。

つまり賃金が普通かそれ以下なのに,体は酷使するという状態です。

それに増して残業や休日出勤をすることが多く,
下手をするとコンビニより時給が低い。
しかもしんどい割に!
という問題が以前叫ばれたことがありました。

「建設業で働くくらいならコンビニでバイトする」ってことです。

賃金問題の解決は?

労働というのは対価であり,大変なものほど多くの賃金をもらうべきです。
また希少性が高い,特別な能力を必要とするほど,同じく多くの賃金をもらうべきと言えます。

建設業に従事する人数は年々減っています。
それは先述した通り,労働環境からの離職者もいれば,高齢化による離職者もいます。
また入職者がいないことも大きな問題となっています。

大変な仕事だけど賃金はいい。という状態をまずは作ることが重要です。
(改めて,大変じゃない仕事を作るための対策についても述べます)

国交省の設計労務単価

国土交通省が毎年,『設計労務単価』というものを公表します。
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00130.html

それは職種ごとに実勢の労働単価を調査して発表しているもので,
簡単に言いますと統一の労働賃金を定めたものです。

これを基本に能力に応じて加算給を含めたり,
会社によっては研修費を含めたり,
機械代を含めたりして労働単価(1日あたりの日給に相当するもの)を支払うことになります。

その単価に加え
元請け事業者は法定福利費(社会保険や健康保険等にかかる費用)を
下請け事業者に支払うこととなっており,労務単価・法定福利費は成り立っています。

2023年度も引き続き労務賃金は上昇!

労働賃金を上げることは就業者の確保に非常に有効ですから,
建設業の労働賃金は,需要と供給バランスに加えて,意図的に上昇しています。
これは先に言いました国交省が公表する設計労務単価による影響でもあります。

全職種平均で5%超以上の賃上げとなっており
単純に20,000円/日であれば21,000円/日と
1日あたり同じ仕事をしていても1,000円の賃上げとなっております。
月に直すとそれなりのアップですよね。

重層下請けの禁止

ここで言う労働賃金とは元請け事業者⇒1次下請け会社に支払う単価を指していますが
建設業はこれまで重層下請け構造になっていることから,
実際に作業従事者の手元には非常に少ない金額しか渡らないという問題がありました。

重層下請けとは元請け⇒1次下請け⇒2次下請け⇒・・・と下請けが重なることを言います。
当然,下請けが重なるといわゆる『中抜き』と言われる経費抜き取り行為が生まれるため,
例えば元請けから1次下請けに20,000円支払っていても
1次が1,000円,2次が1,000円,3次が1000円,
所属する4次が雇用保険等も含めて7,000円抜けば
手元には10,000円しか残りません。

しかしこの下請け構造を法律で禁止することになりました。
ズーパーゼネコンの鹿島建設では原則2次下請けまで(建築では3次まで)
というルールにもなっているようです。
4次会社が2次会社になれば単純に2,000円は抜かれなくなるため,手取りが増えます。

さらに元請けは法定福利費を払っていますから
7,000円抜いていたものが3,000円で済むようになり結果として手取りが16,000円になります。

労働賃金の改善

こうやって少しずつではありますが建設従事者の労働賃金問題は解決に向かっています。
しかし,さらなる問題も待ち受けています。それは労働時間問題です。

賃金と労働時間は密接に繋がっていますので,引き続き後章も御覧いただければと思います。

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