今から現場を始めるぞというタイミングでは現場監督は非常に多くのことを考えなくてはいけません。
おそらく、着手時には発注者向けの書類・社内書類など多くの書類作成にも忙殺されます。
しかし、現場は着手時に多くのことを考えておき、施工を開始しないと後々、大変な目に合います。
一旦、施工が開始されると施工機械が多く入ってきますし、設備なども多く設置する必要がでてきます。
敷鉄板一つとっても、敷鉄板を敷いてしまった後では、その下の地盤は触れなくなります。
その地盤が不陸だらけの凸凹だったら、水たまりができるような地盤だったら・・・
そんな状況になると搬入車両の度に、タイヤの泥汚れを気にしないといけなかったり、
施工機械が不安定になりリスクを抱えながら施工をしなくてはいけなかったりと本当に大変な目にあいます。
そこで今回は着手早々に、
後々のことまで考えて対策すべき『基面造成』についてご紹介いたします!
基面造成 最初の勘所
施工を行う上で大前提として知っておいてほしいことがあります。
「これから造る構造物は地上構造物ですか?地中構造物ですか?」
なぜこのようなことを聞くのかと言いますと
地上構造物を造る場合には、
地上に足場・型枠支保工を代表とする仮設備を上空方面に設置する必要がありますよね。
逆に地中構造物を造る場合には、
基面から下を掘削する、土留めを設置するなど、地中方向の仕事を行う必要があります。
何か仕事をするということはすなわち、費用がかかるということになります。
多くの工事は現況の測量結果を基に、基面高さを設定し、それを基に数量を算出し、積算が行われ、
工事金額が決まります。
最初に設定した基面高さより高い状態で掘削を行えば、余分に土砂を掘らなければなりませんし、
あるいは設計より長い土留め壁を設置する必要があるかもしれません。
逆に低い基面で施工を行えば、想定以上の足場や型枠支保工の高さになるかもしれません。
労働基準監督署に届出が必要な基準に微妙に該当するような高さであればなおさら、
そのような事態は避けたいところです。
つまりは、これから行う仕事の内容によって、基面は高い方が良いのか、低い方が良いのか、
考える必要があるのです。
たった数十cmであっても、土留め長さが100mあれば結構な差として変わってきます。
現場の周辺をよく見てみよう
次に大事なことは、現場周辺の環境についてです。
基面造成を行うということは大前提なんのためなのかというと、
・施工をやり易くすること
・確実な排水ができるようにすること
の2点があります。
前者は、不陸の有無や地耐力が重要になります。
後者は、想定の場所に雨水や施工に伴う水を集水できるか、
もしくは場外に水を流出させることがないかが重要になります。
ここでは、後者を考えたいと思います。
超常識的なことで申し訳ありませんが、
水は「高い方から低い方へ流れる」のです。
当たり前ですよね。
しかし意外にこれって、水がないところでは想像しづらいという問題があります。
道路を見た時に、この道路に降った水はここに集まってくるな。
というのが瞬時にわかる方はおられるでしょうか?
経験的に横断勾配がついているからこっちだな。とか排水溝があるからこっちに集まってくるな。
というのはわかっても、完全に基面のアンジュレーションを見て理解できる人は少ないと思います。
つまり、高さを計測しないとどこが高くてどこが低いのかがわからないのです。
よって現場で重要なのは現場周辺を含め、高さを把握しておくということです。
その時、あなたの現場では、場外と場内どちらが高いか?が基面造成の重要なポイントになります。
『場外が高い場合』
この場合はあまり深く考えずに、水を導きたい方向へ基面を下げてあげればOKです。
『場外が低い場合』
この場合は色々考えることがでてきます。
場外が低いということは、何もしなければ場内に降った雨は外に流れるということです。
場内は土砂面であることが多いので、降った雨は濁水となり流出します。
周辺の方々には迷惑をかけますし、ひどければ環境事故になります。
ですからまずは場外に流出しない措置が必要です。
一つは場外を基点に場外側の基面高さを下げてあげることです。
しかしかなり大規模な造成が必要になる可能性があります。
あるいは先述した地上構造物を設置する工事である場合には、不利益に働く可能性があります。
そういった場合には、場外との境界部に側溝を設置する、
もしくは堰堤を設置する等の措置を行い、場外への濁水流出を防ぎます。
どちらにしても、事前に高さがわかっていなければ何もしようがないことです。
事前調査はとても大事なのです。
排水させるためには
場外に水が溜まっていると基面は傷んでしまい、どんどん地耐力は下がりますし、
何より施工に支障が出ます。
ですから場内の水は、即座に排水できる環境をつくる必要があります。
そこで、どれくらい基面に勾配があれば排水機能として十分なのか?ですが、
参考にしたいのは道路構造令の横断勾配です。
縦断勾配はどこかに繋がる道ですから、急すぎない勾配で道を作ればよいですが
横断勾配って本来あまり必要ないものだと思いませんか?
しかし横断勾配には『1.5%~2.0%(舗装道の場合)』と定められています。
これは排水を考えてのことと思っても支障ありません。
上限値ではなく下限値が定められているのが肝で、
下限値を下回ると水が流れない可能性があるからなのです。
ここで舗装道と土砂、どちらが水が流れやすいと思いますか?
まぁ普通に考えると舗装道ですよね。
そもそも凸凹が小さい分舗装道の方が有利です。
つまり確実に水を流したければ少なくても1.5%以上の勾配を
設けてあげることが必要になってきます。
この勾配をうまく使って縦断・横断的に集水してあげることが重要です。
施工機械の接地圧と地耐力
大型の施工機械を用いる場合には特に重要なお話です。
イメージとしては『人が足で地面を踏むより強く押す機械かどうか』です。
難しいですかね?
もう少しわかりやすく言うとダンプトラックがほぼ人の設置圧と同じと言われています。
それより重い重機であれば一度確認しておくことをおすすめします。
ラフタークレーンのようにピンポイントで大きな荷重がかかるものは特に要注意。
あるいは重量自体が大きい杭打機なんかも要注意です。
地耐力の確認方法には平板載荷試験が一般的ですが、
それほど大それたものではなくても簡易支持力測定(キャスポル)という方法もあります。
リース屋さんから借りることができます。
キャスポルは国交省が簡易的に地耐力を測定するための方法として
推し進めているものですのでそれなりの信用性があります。
詳細はこちらのURLをご確認いただきたいのですが、https://www.kkr.mlit.go.jp/kingi/kensetsu/gijutusien/sokuteiki.html
そこに地耐力と接地圧の安全性を確認するための確認方法も示されています。
地耐力が不足する場合には地盤改良を行うか、敷鉄板などで補強してあげる必要があります。
地耐力測定は砕石などを敷き均す前に行うことをオススメします。
反発度を測定する者なので、地盤ではなく硬いものにあたると大きな地耐力を有するように表示されます。
つまりは石などにあたると本来の地耐力が測定できないからです。
ここまでが基面造成の考え方でした。
以降はちょっとわかりにくかったであろう
基面造成の計画方法について述べます。
基面造成の検討方法
①現場条件の確認
1面だけ道路に接している現場を想定しましょう。道路に接しているということはその面に高さの違いがうまれると境界構造物が損傷する恐れや、車両の入退場に支障が生まれる可能性があります。
②測量結果の反映
平面図に高さを測量した結果を明示します。特に境界部はお忘れなく。
ここでどの部分は高さを変更しても良いか把握しておきましょう。
③断面図作成位置
高さを把握するにはビジュアルで管理する必要があるので、断面図を作成します。
その準備として断面切断位置を決めます。
④断面図・縦断図作成
現況の断面図を作成します。
⑤暫定計画(切盛土断面図)
なるべく切盛土高さが変わらないようにできれば端部と端部を一直線に結びます。現況との差異が切盛土量になります。断面図と縦断図から整合が取れないところは整合が取れるように考えます。
ここで、境界部などの触れない位置を目立つようにしておきましょう。そしてどこに水を導く必要があるのかを意識しながら計画します。
⑥暫定計画(断面図)
切盛土後の形状を示してみます。さきほどの図でわかる場合にはこちらは不要です。
⑦暫定計画(平面図)
確認のために平面図に高さをプロットし、排水勾配を示してみましょう。
すると図面の右下部の矢印がアッチコッチ向いているのがわかります。そういったところは基面が複雑なアンジュレーションを持つため、平らなところや穴ぼこが生まれやすいのでなるべく避けた方が良いです。さらには、右側は勾配が非常にきついことがわかります。7%まで行くと排水的にはOKですが、施工基面としてはかなりの勾配になるので避けた方が良いです。
そういうことからこれらの問題を解消する必要があります。
⑧完成計画(平面図)
さらに、排水・施工基面を考慮した高さ調整を行います。どうしても今回は切土量が増えてしまいましたが、もう少し妥協できるところなどを見つけ、費用との相談でより良い計画を探ります。
⑨排水方法
今回は、道路側が低かったため、どうしても水が溜まる場所(貯水場所)は道路側となってしまいました。今回は低い場所が2箇所あったので、2箇所を貯水場所として設定しました。
排水がうまくいかないと道路側に水が流出してしまうので、その場所に釜場などを設けて水中ポンプを設置しましょう。道路側に排水箇所があると場外への排水も、距離が短く行えるなどメリットもあります。
これらの計画にはこれしかないという正解はありません。
現場の特徴や、施工内容によって様々な正解があります。だからこそ自分たちが施工しやすい方法や形状を見つけ出し、管理しやすい現場を創り出す必要があります。
基面造成一つとっても現場監督の能力次第で現場の良し悪しがゴロっと変わります。言い方を変えますと能力が低ければ、基面造成だけではなく施工自体、一事が万事うまくいかなくなりますので、良い現場を作りましょう!
MAINSFACTORYではこういった現場の計画を得意にしております。
業務依頼だけではなく、ご相談なども承っております!
ご連絡お待ちしております!
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