今回は工程の書き方についてご説明します。
工程表は現場を動かす上で『地図』のようなもので、全ての基本になるものです。
工程表がしっかりしていないと現場は何を基に動いているのかわなくなります。
明確な意思と、『根拠』を持って現場の方向性を示していく必要があります。
工程の基本
まず、工程表の基本を押さえる必要があります。
そもそも発注者の工期はどのように決まっていると思いますか?
開通日や供用開始日が決まっていて、今日までの日数を単純に引いてその日数が工程になっている・・・なんてこともあるかもしれませんが基本的にはそうではありません。
まず実際に作業を伴う工種・数量を算出し、それらにかかる期間を『ある指標に基づき算出し』それを積上げ工事の完成日が決まるのです。
実際は『積み忘れ』や『想定が甘かった』りして少々厳しい工程になることはありますが基本的にはこういった流れで工程は作成されます。
実際に工程を考えてみよう!
工種・数量を洗い出した後、実際にかかる日数を検討してみましょう。
その『指標』となるのが『標準歩掛』というものになります。
国交省でいう『国土交通省土木工事積算基準』通称 赤本(昔は黄本でした)というものですね!
ここでは一旦、
上の例で示しました
・土留め工(仮設工・鋼矢板Ⅲ型・バイブロハンマ単独施工・15m)
・掘削工 (作業土工・土砂・切梁腹起式・障害有り・掘削5m以下)
を代表して見てみましょう!
鋼矢板打設の工程
先述しました赤本は本来、積算根拠資料として工事費を算出するのに用いられるもので、
歩掛以外にも材料費の考え方や機械配置の考え方等も記載されています。
ここでは工程を考える上での必要部分だけを抜き取って紹介します。
国交省積算基準 赤本 Ⅱ-5-②-6 表3.8 日当たり施工枚(N)
本表を見ますと、そのまま1日当たりの施工枚数が示されています。
仕様としてはⅢ型15mなので該当は15m以下のⅢ型…22枚と記載されています。
つまり打込みにかかる所用日数は22枚/日ということになります。
しかし15mの鋼矢板は一般的に特車を用いない場合には運搬できませんので
継施工というものが必要になってきます。
継施工がある場合の歩掛は下表になります。
国交省積算基準 赤本 Ⅱ-5-②-12 表3.20 日当たり継施工枚(N)
15m以下のⅢ型…12枚と記載されています。
つまり施工条件を踏まえず枚数だけを見てしまうと1日あたり10枚もの差が発生するわけです。
(こんな工程表を書いていたら協力会社さんに怒られちゃいますよね!笑)
ただ、鋼矢板工の歩掛には下表の点線枠は含まれていません。
つまり工程表に記載する際には点線枠の日数を考慮して記載しないと、
「準備とか片付けの時間を見てくれてない!」なんてことを言われたりするわけです。
掘削工の工程
ここでは構造物掘削を行うため、掘削の中でも『作業土工・床掘』というものが該当します。
作業の内容によっては積算体系・工程算出の根拠も異なってくるので、
しっかり条件が合っているか確認する必要があります。
最近では、積算手間の省力化・時短を図り、掘削工などでは
施工パッケージというものが採用されています。
そのおかげで(?)ちょっと歩掛の中身がわかりにくくなっているのですが、
ここでは施工パッケージにより算出された値を紹介します。
作業土工→土砂→切梁腹起式→障害有り→掘削5m以下をそれぞれ条件で選択すると
下表のいわゆる代価表というものが作成されます。
代価表とは単位施工数量当りにどの程度、機械や労務人員・材料等が必要になってくるかを示しているものです。
ここに1m3あたりの土を掘削するのに運転手(特殊)が0.005人と記載されています。
つまり1人の人が1日作業をすると、
1m3÷0.005人=200m3/人となり1日で200m3の掘削が行うことがわかります。
これを国交省では標準歩掛、すなわち標準的な工程であり、積算の根拠としているのです。
標準工程
このような作業を繰り返し行うことで、標準的な作業を行えばどの程度の期間で作業を終えれるのかを示すことができます。これが標準的な工程の書き方です。
普通は、工事契約時にはこのようにして算出された工程が『契約工程』となるのです。
現場独自の工程
ただ建設会社としては、標準工程で行っても工程短縮につながらず、『利益』が生まれません。
1日でも早く工事を終えることで人件費や機械費などを削減し、
その分が利益となりますから標準工程のままでは利益0となります。
(厳密にはそうではありませんが…簡単にいうとそうなります)
そこで、現場独自の工程を作成するのです。
まずはベースとなる標準工程を作成した後、
『工夫』や『施工環境の良い面』
あるいは『ラップできる期間』もしくは『施工会社の努力やノウハウ』
などを組み合わせて少しでも早く終えれるように検討します。
・前工程の片付け期間中に次工程の準備期間を当てる。
・施工会社の工夫により標準的な歩掛の1.2倍のスピードで施工が可能。
など様々なことを検討することで工程を短縮していきます。
やってはいけない工程
ここでやってはいけない、異なる言い方をすると『嫌われる工程』を紹介します。
『昔はこれくらいのスピードでいけた工程』
具体的な根拠もなく、前の現場で〇〇の会社は1日〇枚施工したんだぁなんて言う方、非常に多いです。
このような人は実際、
施工長さの違う歩掛で覚えていたり、とても施工条件が良い中で行った作業を基本としていたりします。
根拠のない押し付けは嫌われます。
『ケツ(工期末)が決まってる工程』
目標の完了日に合わせてその中で工程を書き、実際にかかる日数を無視して期間を縮める方法です。
これは最初に供用日から工程を適当に書いたパターンを『まさかの施工会社がやる』パターンです。
こんなことをすると協力会社に嫌われます。
このような場合、安全面やコスト面で大きな痛手を負い、工程短縮以上のマイナス要因が発生することが多分にあります。
どう考えても不可能な場合には、
発注者に対し明確な根拠を持って説明することでいわゆる突貫工事を防ぐ必要があります。
それも工事管理者の仕事です。
『1日1作業工程』
特になにも考えていないと、「今日はこの作業。」「明日はこの作業。」と
毎日1作業ずつを行う工程を書きがちです。
これ、協力会社の方々は仕事のしやすい環境になりますが、
実工程ではそのようにうまくいかず、最終的に時間が足りなくなることが大いにあり得ます。
このようなことが発生すると、協力会社ではなく『上司』や『発注者』から嫌われます。
このようにやってはいけない工程があります。
簡単に言うと『根拠のない工程』は誰も得をしないってことです。
まとめ
工程は現場を動かす上での『地図』と冒頭に言いましたが、
現場に従事する全ての人が目にし、それを基に仕事を行うのですから現場の指標であり、
まさに『地図』なのです。
工程がダメだと、協力会社の方々が儲からなかったり、
後々自分たちが苦しい思いをするだけなので、
適正に・根拠を持って工程を示す必要があるのです!
もっと工程について教えて欲しい!なんて方は他の記事も読んでみてくださいね!
また工事にあたり工程表を書いて欲しい!なんて要望もぜひMAINSFACTORYにお任せください!!
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